2011年2月 2010年の上海滞在半年も残すところ3分の1となり、気の早い女房は帰りの航空チケットを調べ出した。
今回は内装のことで、お舅さんとの間に不協和音が鳴り響き嫌な思いもしたが、住めば都で半年も居ると、今度は東京に戻るのが億劫になるのは毎度のこと。 うつ病が完治しない私にとって、慣れた環境を変えることは、かなりのエネルギーを必要とするのだ。 女房が東京に帰る準備を始めただけで、心がざわつき、得体の知れない不安感が襲ってくる。
駄々をこねても、春節の終わった2月半ばには帰らなければならず、出来るだけ安い航空チケットを探すよう 女房に頼んだ。
「あった、あった!こんなに安いの本当かね」
少し前、日本で話題を振りまいた春秋航空のチケットだった。 行き先は成田ではなく、新しく開港した茨城空港である。 空港から都心に入る交通に難点があると聞いていたが、東京駅へ直行のバスが出ているようだ。 距離的には成田とさほど変わらないように思えたので、安ければその方がお得と判断した。 予約はすべてインターネットからで、搭乗1ヶ月以上前だったので、1人385元(5000円)と超安値。 そのほか空港施設使用料や燃料費を入れても、2人で1100元(14000円)である。
通常、上海〜成田の片道料金は1人2000元(26000円)〜2500元(32500円)するから、その安さは際立って
いる。徹底したコスト削減で、他の追従を許さない低価格を実現したというのは本当だった。
料金システムは出発日が近くなれば段々と高くなるようになっていて、この385元という席は1ヶ月以上前にも
拘らず、あと4、5席しか残っていないかった。 これだけ安ければ迷うことはない、即、決定!搭乗席確保。 交通の便なんか少々悪くたって、この安さの前にはひれ伏してしまうのだ。

夜明けの上海・・・・名残惜しいが、しばしのお別れ |

外灘を流れる黄浦江・・・・昼間見ると汚い川だ |
フライトは午前9:30、心配性の女房は、浦東国際空港に2時間前到着する予定で逆算する。
上海中心部の浦西地区から空港まで、以前はバスで行っていたが、早朝の寒さを耐えてバスを待たねばならないのが、歳と共に馬鹿々しくなり、ここ3年はタクシーで行くようになった。 先が見えてきた今、そうチマチマと節約しても意味のないことに気がついたからだ。
出会い頭のタクシーを止めて、通常メーター料金で行くと150元(1960円)くらい掛かる。 東京から成田までタクシーで行ったとすると15000円でも厳しいから、上海では大分お得感がある。 事前に予約すれば130元に割引してくれる。女房はそこを更に交渉して、110元(1430円)に値切った。
早朝、6時にマンション前まで迎えに来てもらうよう手配して、帰国の準備は整った。

浦東空港・国際線乗り場・・・・いつもバスやタクシーでごった返してる |

浦東空港ロビー・・・・宇都宮吊天井のような恐怖? |
春秋航空は運賃が安い代わりに色々な制約があるし、サービスも無いに等しい。
以前は小さなペットボトルに入った水を1本くれたらしいが、今回はなし。当然、機内食もない。
上海〜成田の飛行時間は2時間半から3時間なので、食事も要らないし、水だって飲まなくても大丈夫。
ちょっとの間我慢すれば、1人7000円で帰って来られる魅力には代えがたい。
早朝の高速道路をバンバン飛ばし、40分ほどで空港に着いてしまった。
やはり出発が早過ぎたと思ったが、十分な余裕は遅れて焦りまくるより、精神的にも断然よいと納得させる。
すぐに手続きカウンターへ向かう。
案の定、安いチケットの春秋航空だけ、すでに長い列が出来ていた。
日本も中国も安いところに人が集まる心理は変わらないようである。
それにしても4箇所フル稼働で手続きをしているのに、行列は遅々として進まない。
なにやら不吉な予感がしないでもなかった・・・・・・・
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20分ほど掛かってようやく私らの番が近くなって来た。 見通しがよくなって左右を見たら、数人がスーツケースを開いて、なにやら思案している。 持ち込んではいけないものでも入っていたのだろうか?私にはそんな風に映った。 カウンターでは先客が係員と揉めている。なんだか雰囲気が刺々しくなってきた。
「あちらのカウンターへどうぞ」
最前列に立って客を誘導する小姐係員に促されて、ズルズルとスーツケースを引っ張って向かった。 インターネットで予約した座席はちゃんと確保されていて、手続きは割りと簡単に済んだ。
座席も指定なしだと運賃のみで済むが、窓際、通路側など好きな場所を指定すると、1人15元(190円)掛かるのである。私らもチョッピリ贅沢をして、これに乗った。
それと春秋航空機にはファーストクラスもビジネスクラスもない。 貧乏人ご用達のような航空会社だから、がら空きで飛ばすより、安くても満席で飛ばした方が得だという考えだ。
その代わり基本料金が安い分、少しでもグレード上げるとドンドン加算されていくというシステム。 なんせ航空運賃を安く設定するために、立ち乗りまで考えている会社なのである。 こうなるといくら安くても拷問のようで、ちょっと引いてしまうのは私だけだろうか? だが中国人には「安いことはいいことだ!」と、受け入られることは想像に難くない。

春秋国空のチェクインカウンター・・・・格安だけに長い行列 |

更に安い料金実現のため、立ち席を検討中・・・・拷問席と呼ぼうか |
さて、最後に難関の重量検査。
紺の制服を着たカウンターの小姐係員が、ベルトコンベアーの上に全部の荷物を置くよう指示した。
スーツケースは勿論、機内に持ち込む手荷物も全部である。
春秋航空の持ち込み出来る重量は1人15kgと決まっていて、これをオーバーすると1kgごとに超過料金が加算される。じゃぁ、その1kgが幾らかとなると、まことに要領を得ない。
超過した重量1kg(2.2ポンド)当り、超過手荷物切符の発行日に有効なノーマルエコノミ―チケット(正規片道・成人普通運賃)全額の1,5%を徴収するのだという。
日によって金額が変わるのなら、大体、幾らから幾らと目安になる金額を提示した方がよほど親切である。 用意周到な女房のことだから、一応規定を読むには読んだが、よく分からないまま、超過を取られてもそれほどの金額にはなるまいと判断して、あまり重さのことは考えずに帰り支度をした。

緊張感が走る重量検査・・・・1kgオーバーにつき1500円は高すぎ! |

搭乗口・・・・ここからバスに乗って飛行機まで行くのだ |
ベルトコンベアーの上に、スーツケースとパソコンの入っているキャリーケースを置いた。
愛想のない小姐は、分かっているのに無駄な抵抗をするな!と言わんばかりに、無言で顎をしゃくり上げ、私らが肩掛けしていたショルダーバッグも一緒に置くよう指示した。
「7kgの超過です」
目の前のモニターに表示された数字を見て、小姐はあくまで事務的に告げた。
(おっ、よかったぁ、大したことないじゃん)
お土産など適当に詰めたけど、私と女房は正直、それほどの超過でなかったことに安堵した。
「それで幾らなの?」
「今日は1kg110元ですから、770元(10000円)ですね」
「ガァ〜〜〜ン!」
中国通貨で聞くと、余計に大変な金額だと感じてしまう。
770元あればあれも買える、これも買える。ほぼお舅さんのアルバイト代に匹敵するのだ。
「向こうで整理してもいいですよ」
親切からか、その衝撃度合いから貧乏人と見下しての勧めだったのか。
カウンターから少し離れたところで、スーツケースを開けて悩んでいる人の理由が分かった。
整理するといっても、全部必要だから詰めてきたのに、今更整理のしようがない。
「どうする?しょうがないよね」
女房が憤懣やるかたない顔で、私に同意を求めてきた。
おいしい話には、やっぱり裏があるものである。
まぁ、これを払っても、まだ他の航空会社より安いのだから、高い授業料を払ったと思って頷いた。
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