2006年9月
2006年9月初旬、上海に舞い戻ってきた。
今年は1月28日から始まった中国春節をタップリ堪能し、慌しく帰国してから半年が経っていた、
今回は節約を主眼に置いた船旅を女房が強く希望、押し切られて延べ3日掛けてやって来た。
船旅なんて最初は冗談かと思っていたが、旅行シ−ズンを迎えたこの時期、1年のオープンチケットなら1人10万円近くなり、加えて昨今のガソリン値上げから別途燃料費も取られる。
船旅なら大阪まで行かなければならない煩わしさはあるものの、2等客室4人室で往復32000円、雑魚寝の大部屋なら30000円だ。しかも別途燃料費も取られない。
勿論、大阪まで新幹線など使わない。こんなのに乗ったら飛行機で行くのと変わらなくなってしまう。
まったく日本は何でも高い、半端なお金では旅行もできない。
そこで夜行バスで行く事となる。これなら3500円で往復でも7000円、〆て39000円と飛行機代の半分で行ける。
こんな上手い手を見付ければ、倹約女房が放って置く筈がない。
「これから半年も上海にいるのに、そんなに早く着いたってしょうがないでしょ」
「そうは言っても、わざわざ大阪まで行くのも大変な話しだぜ」
「うちの玄関を出たら、旅が始まったと思えばいいんだよ!」
まぁ、そう言われれば確かに一理はある。やはり口では中国人には敵わない。
荷物を持っての移動は大変なので、大きなスーツケースだけ宅配で船会社に送った。
出港当日しか受け付けず、しかも10時必着という指定なので、仕方なく割増料金を払って時間指定にした。
これが2500円、それでもあの大きなケースをズルズル引き摺って行くことを考えたら有り難い。
夜行バスは東京駅から夜半11時に出発。心配性女房の奴、遅れては元も子もないと早目に家を出た。
東京駅に着いたのが9時、どうでもいいけど早過ぎやしないかぁ?
9月初旬だからまだ夜になっても暑い。涼みがてらバスターミナル近くの喫茶店で一息ついたが、10時には閉店だと追い出されてしまった。・・・・・ムラムラッと怒りが込み上げてきて、二度と船なんかで行くもんかと心に誓う。
夜行バスは2階建てで、女房は得意げに「長さも通常のバスより長いんだよ、珍しいバスに乗れてよかったね」と言ったが、子供じゃあるまいし別に嬉しかない。
逆に1人でも多く乗せて利益を上げようとする魂胆が透けて見えてくるようだ。
女房がインターネットで予約したから、当然、2階席である。車内は天井がやけに低く、圧迫感で気が沈む。
夜通し走るんだから景色なんか見えないし、1階の方が良かったんじゃないのか!
トイレ付きなので途中停車は1回だけ、その都度降りて煙草を吸う楽しみも奪われた。
観念して小刻みに揺れる振動に身を任せていたら、いつの間にか寝入ったらしく、目が覚めて窓のカーテンを少し開けたら外は明るくなっていた。難行苦行を覚悟していたが、案外楽に大阪行きを切り抜けた。

フェリー乗り場・・・背の高い外国人もチラホラだが、殆んど中国人 |

白亜の蘇州号・・・サービスもまずまずで、快適な船旅 |
大阪から電車を乗り継いでコスモスクエア駅に着いた。ここから大阪国際フェリーターミナルまでバスかタクシーで行く。時間があるので30分間隔で運行している市営バスを待つことにした。
外は日差しが暑く、まだまだ夏の余韻を残している。女房が地階のコンビニでおにぎりとジュースを買ってきた。
これが朝飯だとか、どこまでも貧乏性に出来ている上海女房である。
大阪〜上海行きの客船には鑑真号と蘇州号があるが、料金は変わらない。
私らが乗った船は蘇州号で、全長154m、客定員316人、14410トン、最大21ノットの5星客船である。
夏休みも終わり、客足も一段落ついたのか乗船客はそう多くはなかった。
私らは4人室の二等客室だったが、うまくすれば2人で個室同様に使えるかも知れないとほくそ笑み、同室の客がいないことを願った。
部屋は2段ベットが両サイドに設えられていて、奥の窓際にちょっと寛げる空間がある。小さな座卓が一つ置いてあって、壁のコーナー棚にはテレビまであった。これなら2日間の船旅も快適に過ごせそうだ。
この船には展望風呂もあるが、自由に使えるのは一等客室以上の乗客で、二等客室以下は別途入浴料を払わなければならない。
だが心配ご無用、シャワー室が完備していて、6つほど横並びした個室は、乗客の数からしたら十分だろう。
中国船だがトイレは洋式で安心した。清潔で清掃も行き届いているし、申し分ない。

乗客交流の場メインホール・・・卓球台は無料のようだった |

中国硬座車両よりはグッド!・・・エンジンの振動が心地良い |
日本とも名残惜しいが出船の汽笛、ちょうどお昼の12時に出港した。
右に本州、左に四国の瀬戸内海を悠然と進む。デッキから眺める風光明媚な小島の景色は心洗われるようだ。
天気は上々、吹き抜ける心地良い海風に残暑の暑さも忘れ、すっかり船旅が気に入った。
それにとうとう相部屋人が現れず、夫婦2人の個室になったので、こちらも機嫌であった。
煙草もホールへ行けば自由に吸える。部屋からいちいち出て行くのは少々面倒だが、煙草を止めなければならない身の上とあっては、本数が減ってちょうどいい。
ホールには飲み物の自動販売機もあって、喉に乾きに不自由する事はない。
螺旋階段を上がった2階にレストランがあり、朝の食事は無料だが、昼と夜はここで食べるようになる。
食べるところはここしかないとなると値段が高いのが相場だが、割りとリーズナブルなので逆に感心した。
メニューの数も少なく、味も期待は出来ないだろうが、まぁ良心的ということで目を瞑りたい。

風光明媚な瀬戸内海の小島・・・天気はいいし、絶好の船旅日和 |

島と島を繋ぐ吊り橋・・・間近で見るとスゴイ迫力! |
瀬戸内海は吊橋の多いのに驚く。
島々に架かる橋をを見ていると、映画「二十四の瞳」や「裸の島」を思い出す。
昔はそれぞれの行き来は船しかなかったから、さぞ大変だったろう。だが今や車で一走り、人間がモノを作り出す力はスゴイ!豊かになるという事は限りなく便利になるという事かも知れない。
でも素人考えで、これだけ数あると中には税金の無駄遣いと言えなくもない橋があるんじゃないだろうか?
ホールにはいつも5〜6人くらい屯している。色々な人種が混ざって、様々な言語が飛び交う。
備え付けの大型のテレビでは終日映画を放映しているが、その真ん前にあるソファに陣取っているのはいつも白人の若者だ。お喋りに夢中なのは中国人、日本人は気安く心を開かないから、散り散りになって孤独だ。
むさ苦しい姿をした見るからに貧乏旅行を目指す日本人若者が、さっきから何かを悩んでいる様子で、思い余ったように突然私に声を掛けてきた。
「部屋は空いていますか?って中国語でなんていうのか分かりますか?」
「私も中国語は出来ないんですよ」
隣りに座っている女房に「教えてやれ」と肘でつついた。
その青年はどうやら食べる事よりも、ねぐらの心配が先に立っているようだった。
それにしてもその程度も知らないで中国を旅しようってんだから、相当、剛の者らしい。
聞けば10万円で1ヶ月中国を旅するのだという。私も貧乏旅行では一家言あるので出来ない!とは言わないが、言葉も理解できなくて中国を回ろうというのはかなり心臓が強い。
まぁ、若さで乗り切るのか?それならば年寄り臭く意見などしない。
「成せば成るですよ、いざとなりゃ日本語で身振り手振り押し切っちゃうんですね」
「そうですよね〜、私もそのつもりです」
「そうそう、その意気!同じ人間だからね、それで何とか通じちゃうもんですよ」
私も随分と無責任である。この辺は大分中国イズムに洗脳されてきたか?
まっ、これも世の為人の為、無軌道な若者にはいい経験になるんじゃないかな、世の中はそう甘くないってね。
隣りの女房があきれた顔をしていた。
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