池 ノ 谷
2011年5月21日(土) 富山県
寝坊で山行の機会を逃さないよう今回は現地で仮眠することにした。2時過ぎに馬場島に到着し、ビールを一本空けてから仮眠する。目覚ましを3時半にセット。 通り過ぎる車の音で目を覚まし慌てて時計を見るも、すでに5時を回ってた。それから慌しく準備を始める。着替え、パッキング、装備の選択などで1時間近く費やしてしまう。 寝坊という大失態を犯しやる気なし。怪しげな雲行きも拍車を掛ける。とりあえずタイムリミットまで行動するといういい加減な目的で山歩きすることにした。目標が曖昧な山行ほどつまらないものはないのだが、山に行けること自体感謝しなければならないと思う今日この頃。だからこそ寝坊が悔やまれるのだった。 |

| 白萩川沿いの林道をヤケクソ気分で歩く。堰堤下を左岸へ飛び石で渡り堰堤上を右岸へ渡渉する。ズタズタの雪渓と岩の隙間をチムニーで越え激流をへつると、ようやく雪渓が繋がり池ノ谷出合を通り過ぎてから雪渓伝いに左岸側へ渡る。この辺に小窓尾根へ取り付くルートがあるはずだ。斜面をよくみると樹林が降りている緩傾斜が2箇所あり、近いほうの雪斜面を登る。すると、目の前にトラロープが現れ踏み跡らしきが現れた。踏み跡に随い急斜面を登る。とりあえず小窓尾根へは登れそうだ!そう思うと先ほどまでの焦心が消え気分が和らぐ。 |

| 単なる尾根であるが意外と高さがある。苦しい息を整えながら登る。巻き道は藪道から樹林帯になり、はっきりとした山道になる。ここで大休憩。しかし、ブヨ・ヌカカ・藪蚊の類が群がり、そのうち一匹が目玉に飛び込んでくる。慌て飲んでいたポカリで目を洗う。 登ってる時間と休んでいる時間が同じぐらいだったろうか。小窓尾根である程度は満足できていた。展望の良いところで写真を撮って引き返そう。どうせ天気も悪いし。そんなことを考えていた矢先だった。なんと、後ろから単独者が現れる。ビックリ!しかも、そこそこお歳のメット姿の山屋さんである。 挨拶を交わしたあと「タカノスワリは来れたのか?」と聞かれ?「白萩川は川通しで来たけど・・・」と答えたら「それは運が良かったな!俺は山越えで来たからすごく時間がかかったよ・・・」という事だった。おそらく水濡れを避けるためのルートなんだろうと思う。堰堤の左斜面には巻き道がある。あえて口には出さなかったが、こっちは水を得たお魚気分で遡行したのだ。それにしてもこんなところへ単独で来るなんてよほどの熟達者に違いない。私なんか足腰弱弱老体鞭打ちでやっとこさ来れたというのに・・・ |



| この単独者の登場でなんとなく急いで先に進まなくてはならない雰囲気となり、ルート無視で池ノ谷へ下降する。池ノ谷へ降り立ち歩き出してすぐ雨が降り出す。慌て上下カッパを着用するが雨はさほど降らず途中でカッパを脱ぐ。単独者はまだ尾根上のようであった。 |

| 最初の二又を左に入るとヘリが着地できそうな平な雪渓があり、そこにはピンクの旗や赤ペンキが雪上に印付けられていた。まさにヘリポート。左又は距離は短いが傾斜があってなかなか足が上がらない。ガスが晴れたら写真を撮ろうとそればかり考えていた。とりあえずの目標は奥の二股にしよう。 |


| おそらく稜線を挟んだ黒部側の東面は晴れているんだろう。ここだけガスが集まる地形的事情があるのだと思う。静寂の中、雷鳥の鳴き声が近くに聞こえる。時々起こる落石音に神経をすり減らす。ガスの向こうから勢いよく石が飛んでくる。転がってくるものは寸前で交わせるが、ダイレクトに飛落するものは避けられない。驚くことに雪の下がまだクラストしているところがあり、アイゼンが刺さらない。壁から染み出た水のしたが一面氷になっている。 |


| 時間は12:40分、迷ったがタイムアウトだ。ここまで来て引き返しとはほんとに勿体無い!やはりこの界隈を歩き遊ぶにはテン泊必須だと思う。日帰りではまともな山歩きはできないと実感する。いずれにしても本場のクライミングエリアにおいて安易な雪渓歩きしかできない自分、八つ峰だのドームだのをただ見上げることしかできないクライミング弱者の自分にとっては別世界だった。ルートクライミングはやらないにしても、小窓尾根から赤谷尾根を周回してみたいとか、ゴルジュ内を上から覗いてみたいとか様々な思いが積もるのであった。 赤茶けた乾いた大陸の山に比べたら、山の息吹というか瑞々しさが比較にならないほど違う。それだけでもう万感の思いだった。当たり前にいつでも山に行ける人は幸せ者と思うべきだろう。次は7月中旬以降になるだろうか、日が高く登った馬場島で爆睡寝坊している自分が目に浮かぶ。 |

| ちなみに帰りの渡渉は水嵩が上がり厳しかった。雪解けのこの季節は早朝と午後では水量が1割以上増す。だから朝ぎりぎりで渡渉したならば帰りは渡渉不能となることがあるので注意したい。 |