| p112、「フィトテラピー」と「アロマテラピー」はべつのものです
アロマテラピー研究家:高山林太郎
このごろ「フィトテラピー」(これはフランス語で英語ではハーバリズムあるいはハーバルメディスンと呼び、植物療法を意味します)ということばを用いて、植物原料を使用して人体の不調をなおす医療技術をさす人びとがいます。そのかぎりではこの用語はまちがいではありませんが、困るのは、この「フィトテラピー」に「アロマテラピー」を含めてしまおうとする人間が一部にいるという事実があることです。
「フィトテラピー」、すなわちハーバリズムは、原則として植物の全部の木部、樹皮や根、果実や種子、葉や茎などをそのまま浸剤、煎剤(ハーブティー)にしたり、それらをもとにチンキ剤やエキス剤などをつくったりして、それれを主として患者に経口的に摂取させて治療を行うやりかたです。
それにたいして、「アロマテラピー」は、植物のいろいろな部分から蒸留により(この行程で植物成分が変化します)抽出した芳香成分の精油を、あるいは原料を圧搾してとりだした香りの強いエッセンスをおもに外用し、マッサージ、吸入、湿布そのほかの方式で使って、人間の心とさまざまな不調をいやすテクニックです。
この二つの療法には、おのおのの長所と短所とがあり、どちらのほうが優れているという一概にいうことはできません。英国やフランスやドイツなどの植物療法の専門家たちは、フィトテラピーとアロマテラピーとを独立したべつべつの療法と考えています。
それは、
1. この双方の療法で使う植物製剤の剤型が根本的にちがうこと
2. それぞれの薬剤の性質がまったく異なること(フィトテラピーでは植物のタンニン、アルカロイド類、粘液類、多糖類などの水溶性成分、アロマテラピーでは精油、エッセンスという油溶性成分がそれぞれの薬剤となる)
3. したがって体内に吸収されてからのこれら双方の療法の薬剤の効果のあらわれかた、薬剤の代謝、排せつのされかたがべつであること
4. 薬剤の投与方法に差異があることによります。
そうしたことからしますと、この双方の療法のちがいを浅薄にしか捉えず、どちらも植物原料を基本とした薬剤を使う療法だからと、いっしょにして考えてしまうことは、これらの療法がどのようなルールをたどって今日をむかえているのかを無視することにつながり、双方の療法を正しいかたちで進歩発展させていけなくなるばかりか、人びとの間にいたずらに混乱を生じさせてしまうもとになってしまいます。
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ことばの使い方の要諦は、何よりもまず意味するものを的確に、人びとに誤解をおこさせないように表現することにあるのは、いうまでもありません。こうしたことをみんながはっきりと自覚している英国などでは、植物療法の専門家はハーバリスト、アロマテラピーの専門家はアロマセラピストとして峻別していて、それぞれのスペシャリストたちはおのおのの専門分野でしっかりと研究を進め、臨床経験を重ねて、いずれもみるべき成果を着実に収めています。
フィトテラピーにせよ、アロマテラピーにせよ、わが国は英仏などの国々に比較してまだまだ立ち遅れています。私たち日本人は、何よりも先進諸国の専門家の説くところに謙虚に耳を傾け、最新の医学、生理学、化学、生化学、薬学、植物学の知見を十二分に学ばなくてはなりません。そうした土台に立ってこそ、はじめて異説異論を唱える資格ができるのです。
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