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植物療法を理解するために


「フィトテラピー」と「アロマテラピー」について

 このホームページでご紹介しているフィトテラピーの概念は、「全体の枠組み」で示した通り、「アロマテラピー」も「フィトテラピー」の概念に含めて考えています。このことは、「アロマテラピー」を基本とした考え方の人々にとっては、若干抵抗があるところであると思います。

 しかしながら、「アロマテラピー」を基本とした考え方でも、芳香セラピーという概念で、いろいろな症状に対して、概要、原因、悪化要因、効果のある精油、精油の利用方法(これらの部分が本来のアロマテラピー)、薬草療法(ハーバリズム)、栄養補助剤(栄養学)、アドバイスの区分による具体的な処方が示されている書物もあります。これはアロマテラピーですが、フィトテラピーの概念です。(アロマセラピー百科事典/クリシー・ワイルドウッド著/日本ヴォーグ社/1997.09.20)

 要は、フィトテラピー(植物療法)は、「アロマテラピー(精油)とハーバリズム(ハーブ)が互いに補完して、病気や身体の不調、皮膚の障害等に植物性薬理作用物質を応用した手当を目的にしている」、ということです。精油やハーブの持っているお互いの長所、短所を補完して、本来、人間の身体に備わっている恒常性と自然治癒能に働きかけ、疾病の予防、保護、手当をする療法だということです。

 いろいろな概念が存在しますが、以下興味ある考え方をご紹介し、フィトテラピー、アロマテラピーに対する概念を捉えていただければ幸いです。


ホリスティック・アロマテラピー/ロバートティスランド著/高山林太郎訳/フレグランスジャーナル社/1989.01.17

 アロマテラピーの区分を三つの概念で捉えています。「全体的(ホリスティック)アロマテラピー」、「医学的(臨床的)アロマテラピー」、および「エステティックアロマテラピー」の三種類があることを明らかにし、著者が拠って立つ生命力というものを重視する全体論的哲学に支えられた全体的アロマテラピーについて、くわしく説いています。

1. 全体的アロマテラピー

 実践むきの療法で、心と体との双方にかかわりあうことがあるひろい範囲の疾患を治療するための精油とマッサージを使うもの。栄養と微妙なエネルギーのアンバランスなどの他の要素も考慮に入れるのがふつうである。

2. 医学的(臨床的)アロマテラピー

 処方治療法で、精油は通常、経口的に与えられる。これは一部のフランスの医師たちが感染症の治療にひろく用いている。薬草の調製もしばしばこれと同時に処方される。

3. エステティックアロマテラピー

 しばしばすでにブレンドしてあるアロマテラピーオイルを美容療法家たちが使用するもの。この療法はリラックスするために、痩身を促すために、あるいは痙瘡と妊娠線のような皮膚障害をなおすために行われている。(以上はp13)

 また、アロマテラピーはこれまで植物医学の一部門(医学的アロマテラピーにあてはまる効果)であり、また美容療法の一部門(エステティックアロマテラピーにあてはまる)であるとも評されてきました。しかし、全体的アロマテラピーは何の一部門でもありません。それは独立した療法であり、そう認められるに値します。(以上はp14)


aromatopia 28 ローズオイルの効用/フレグランスジャーナル社/vol.7/no.3/1998

p112、「フィトテラピー」と「アロマテラピー」はべつのものです

アロマテラピー研究家:高山林太郎

 このごろ「フィトテラピー」(これはフランス語で英語ではハーバリズムあるいはハーバルメディスンと呼び、植物療法を意味します)ということばを用いて、植物原料を使用して人体の不調をなおす医療技術をさす人びとがいます。そのかぎりではこの用語はまちがいではありませんが、困るのは、この「フィトテラピー」に「アロマテラピー」を含めてしまおうとする人間が一部にいるという事実があることです。

 「フィトテラピー」、すなわちハーバリズムは、原則として植物の全部の木部、樹皮や根、果実や種子、葉や茎などをそのまま浸剤、煎剤(ハーブティー)にしたり、それらをもとにチンキ剤やエキス剤などをつくったりして、それれを主として患者に経口的に摂取させて治療を行うやりかたです。
それにたいして、「アロマテラピー」は、植物のいろいろな部分から蒸留により(この行程で植物成分が変化します)抽出した芳香成分の精油を、あるいは原料を圧搾してとりだした香りの強いエッセンスをおもに外用し、マッサージ、吸入、湿布そのほかの方式で使って、人間の心とさまざまな不調をいやすテクニックです。

 この二つの療法には、おのおのの長所と短所とがあり、どちらのほうが優れているという一概にいうことはできません。英国やフランスやドイツなどの植物療法の専門家たちは、フィトテラピーとアロマテラピーとを独立したべつべつの療法と考えています。

それは、

1. この双方の療法で使う植物製剤の剤型が根本的にちがうこと

2. それぞれの薬剤の性質がまったく異なること(フィトテラピーでは植物のタンニン、アルカロイド類、粘液類、多糖類などの水溶性成分、アロマテラピーでは精油、エッセンスという油溶性成分がそれぞれの薬剤となる)

3. したがって体内に吸収されてからのこれら双方の療法の薬剤の効果のあらわれかた、薬剤の代謝、排せつのされかたがべつであること

4. 薬剤の投与方法に差異があることによります。

 そうしたことからしますと、この双方の療法のちがいを浅薄にしか捉えず、どちらも植物原料を基本とした薬剤を使う療法だからと、いっしょにして考えてしまうことは、これらの療法がどのようなルールをたどって今日をむかえているのかを無視することにつながり、双方の療法を正しいかたちで進歩発展させていけなくなるばかりか、人びとの間にいたずらに混乱を生じさせてしまうもとになってしまいます。

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 ことばの使い方の要諦は、何よりもまず意味するものを的確に、人びとに誤解をおこさせないように表現することにあるのは、いうまでもありません。こうしたことをみんながはっきりと自覚している英国などでは、植物療法の専門家はハーバリスト、アロマテラピーの専門家はアロマセラピストとして峻別していて、それぞれのスペシャリストたちはおのおのの専門分野でしっかりと研究を進め、臨床経験を重ねて、いずれもみるべき成果を着実に収めています。

 フィトテラピーにせよ、アロマテラピーにせよ、わが国は英仏などの国々に比較してまだまだ立ち遅れています。私たち日本人は、何よりも先進諸国の専門家の説くところに謙虚に耳を傾け、最新の医学、生理学、化学、生化学、薬学、植物学の知見を十二分に学ばなくてはなりません。そうした土台に立ってこそ、はじめて異説異論を唱える資格ができるのです。

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