絞りの値は極限等級に影響
一般の撮影では、絞りの値を変更しピントの深度を操作することによって撮影対象の表現に工夫することができます。しかし無限遠にある天体撮影ではこの効果は望めません。絞れば絞るほどカメラレンズの有効径は小さくなり、これによって固定撮影で写すことのできる星の数は減少します。一方、たくさん絞る程レンズの収差は小さくなりシャープに撮影できます。天体は点光源なため、レンズの収差には極めて敏感なのです。色収差やコマ収差があると星像が肥大あるいは変形してしまいます。このへんのバランスを考え、露出時間、使用フィルム、撮影コンセプトから絞りを決定しなければなりません。私は、絞り=開放〜F=4 程度で撮影しています。F=4以上に絞ると撮影できる星の数が減少して天体写真とは言えなくなってしまうからです。
固定撮影で写すことのできる星の極限等級は下の表を参考にして下さい。この値は空の透明度や暗さによって大きく変化します。
ISO=400のネガカラーフィルム使用の場合
| 焦点距離 | レンズのF値 |
| 1.4 | 2.0 | 2.8 | 4.0 | 5.6 |
| 20mm | 9.1 | 8.3 | 7.6 | 6.8 | 6.1 |
| 28mm | 9.5 | 8.7 | 8.0 | 7.2 | 6.5 |
| 35mm | 9.7 | 9.0 | 8.2 | 7.4 | 6.7 |
| 50mm | 10.1 | 9.3 | 8.6 | 7.8 | 7.1 |
極限等級の算出方法について
フィルムに蓄積できる星の光量Pは、露出時間に比例し、レンズの有効径D(mm)の2乗に比例します。しかし固定撮影では星が日周運動により動いてしまうことから、ある一定時間T(秒)(=露出時間上限値)以上露光してもフィルム1点に星の光をとどめておくことができません。このことから光量Pは、DとTのみに依存することになります。
P = K1×(D×D)×T ・・・・・1) K1:比例定数
D(mm)をレンズの焦点距離L(mm)、F値を使って表すと、2)式のようになります。
D = L/F ・・・・・2)
また、露出時間上限値T(秒)は、レンズの焦点距離L、赤偉θの余弦cosθに反比例し、フィルムの銀粒子経R(mm)に比例します。
T = K2×R/(L×cosθ) ・・・・・3) K2:比例定数
2)3)式を1)式に代入して4)式を得ます。
P = K×(L×R)/(F×F×cosθ) ・・・・・4) K:比例定数
星の等級は光量が100倍になると5(等級)明るくなるように決められています。これは、光量がZ倍になると5)式で表されるY1(等級)だけ明るくなることを意味しています。
Y1 = 2.5×logZ ・・・・・5)
R=0.03(mm)のISO=400のフィルムを用い、天の赤道(θ=0)付近をF=2、L=50(mm)の標準レンズを用いて固定撮影した場合、9.3(等級)の星まで撮影できることが経験上分かっています。
このデータと4)5)式、そして光量がフィルム上へ記録される効率がISOに比例することを考え合わせると、極限等級Y(等級)は6)式で見積もることができます。
6)式から、Fを2倍にすると極限等級は1.5(等級)ダウンし、フィルム感度ISOが4倍になると(粒子経Rが変化しないとして)、極限等級は1.5(等級)アップすることが分かります。また、天の赤道に比べ、赤偉30(deg)の星域では0.2(等級)、赤偉60(deg)の星域では0.8(等級)極限等級はアップすることも分かります。
上表は、ISO=400、天の赤道上、R=0.03(mm)のフィルムを用いた場合の極限等級をまとめたものです。
現実には、Fの小さい場合にはレンズの収差も大きくなる傾向があり限界等級は上表よりいくぶん(レンズ性能によっては大きく)低下します。やはり、実際に撮影してこれらのことを把握することが何より重要なのです。
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