涙のマンション内装記

1章 苦労のマンション獲得の巻

 帰国を1週間後に控えて慌しくマンション探しが始まった。
1996年初めて上海を訪ねた時にも、マンションを見て廻ったが当時は上海バブルの真ッ最中、人の足元を見透かした法外な価格に呆れて、話は其の侭立ち消えとなっていた。
あれから3年、調べてみると随分安くなった。本来の適正価格に戻ったという事だろうか?
一般庶民にも20年30年とローンが組める法改正をして、政府の目論見が見事に当たった。
それで又適正価格のマンションブーム再来で、猫も杓子も湧き返っていた。

私が何故その気に成ったかと言うと、日本でマンションを購入したらそれでお終いではない。
毎月の管理費や修繕積立金等はず〜とついて廻る。
上海ではローンを組めれば、その分で払える計算になるのだ。
上海のマンション維持管理費は月100元程度であるから問題はナイ。
私の胸算用だと感覚的ではあるが、タダ同然という事になる・・・・・・・それで買う気になった。

上海通であるお舅さんの情報を元に、これからも更に発展する上海の展望なども考慮しながら、 候補地選びの家族会議を連日開催。
新聞広告、街頭チラシ、お舅さんが足で集めてきた膨大な量のパンフレットが所狭しと床に並べられ、それぞれの価格が上海市内地図に書き込まれていった。
土地に明るくない私は何時も蚊帳の外で、頼みの綱はお舅さんが「30万元ぐらいで買える」と言っていた一言であった。 その割には、此処は100万元とか其処は120万元とか景気のいい数字が飛び交う。
結局お舅さんの周辺は、昨今一大商業地域に変貌していて手が出ない事だけは分かった。
いきおい上海郊外に範囲を広げたが、嫁さんを始め一族は挙って難色を示した。
チョット前まで田畑だった農村へ行く事は、都落ちのような屈辱感を上海人は感じるらしい。
愛妻は「そんな所に行くのなら、友達にも言えないからイラナイ」と言い出す始末。
兎に角、宥めすかしてどんな所か一度見に行く事にした。

お舅さんの住む地下鉄最寄駅、徐匯区徐家匯から6〜8駅ぐらいの新興住宅地域を
見て歩いた。
元より私は上海人的プライドなど無いから、至極気に入った。

確かに駅周辺は繁華街など無くひっそりとした趣だが、住むには閑静で寧ろ住み易い印象である。
しかも駅前の新築で、敷地内に公園と見間違うほどの緑や噴水まであり、外観も瀟洒な造りだし、管理体制も堅牢な門の前に守衛が常駐していて文句ナイ。
これで2LDK平均100uで30万元とくれば迷う事ない筈なのだが・・・・・・・・・

結局帰国までには決定出来ず、お舅さんが引き続き堀出し物を探すとの事で日本に戻った。
連日のように嫁さんは上海のお舅さんと電話で遣り取りしていたが、ラチが明かずイキリ立って帰国後8日目には再度上海に戻って行った・・・・・・・・・・・思い込んだら何とかである。
1999年10月15日、遅れる事1週間あまりで私も上海に舞い戻ったが、胸騒ぎは的中し、予想通り内々で話はすっかり出来上がっていた。・・・・・・・・・・・・何故だァ??
此処に至っては覆すことは至難と判断、引き攣り笑いを見せて軍門に下ったのである。

   25階建ての15階に決定

   チョットした憩いのガーデン

早速、翌日その物件を見に行った。提示された3件の候補は何処もお舅さんのマンションから 歩いても行かれる範囲で、駅からも徒歩10分圏内である。

「この辺はこれからもっと発展する。絶対に損のない買い物ダ!」

自信を持って言い切る
お舅さん。
傍らの母娘も同時に頷く・・・・・・・エエ〜イ!こうなりゃ破れかぶれだ!

勢いで決めてしまった・・・・・・・・内装造作なしの金80万元であった(泣)。

     何処のマンションも内装前はこんな程度

       入口に警備員詰め所が見える

そうと決まれば早く内装に掛かって貰いたいのが人情である。
都合よく?国営の建設公司をレイオフ中のお舅さんに、監督その他一切を仕切ってもらい、一日も早く住めるようにして欲しいと願った。
上海では日本のように全部出来上がっていて、引越すだけという物件は少なく、オーナー自ら大工さんやタイル職人その他セメント、砂、配管材料に至るまで手配仕切る事が少なくない。
昨今こそ請負業者も現れ始めて、簡単な図面と口頭の話し合いで仕様を決め、一式幾らで工事を始めてしまうケースが増えては来たが、そこは中国のこと見積書や明細が無いからと、勝手に仕様を落としトラブルが絶えないらしい。
その点ウチは安心である。何しろお舅さんが総監督だから誤魔化される心配はナイ。
私も建築屋の端くれだが、よその国まで来て事情も分からず采配出来る筈もない。
ここはお舅さんに娘の為一肌脱いで貰って、私は口を挟むまいと・・・・・・・思っていた。

             玄関ロビー前

           ガーデンは噴水付き

考えてみると私もよくよくお人好しである。
ゴリ押しでマンションを決定され、しかも娘(女房)名義で購入したのにも係わらず、お舅姑さんに監督料と宿泊費で1万元も払った。(滞在45日間同居させてもらう)
私の気持ちの中では20歳も違う夫婦ゆえ、近い将来?名実ともに娘のモノになるマンションだから手弁当でやって貰っても、罰は当たらないという気はあった。
しかし女房のメンツも立てなければならない・・・・・・・・ここが大事だ。
ヒョッとして断わるかなと思ったが、胸中とは裏腹に気持ちよく受け取ってくれた。
・・・・・・・・・・・・お舅さんの給料10ヶ月分に相当する。
まさか私が日本人だという事で、打ち出の小槌のように振れば幾らでも出てくると思っている訳でもないのだろうが、この先こういうパターンがいつまで続くのかと不安に感じたのが本音であった。

私は内装について自分の要望を設計士に伝えたら、旅行にでも行こうと思っていた。
そう、何の心配も無く大船に乗ったつもりでいたのだったが・・・・・・・・・・


2章 俺の設計に文句あっか!の巻に続く・・・・

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