2007年2月
前回から1年が過ぎた。あれからビヤ樽ビルのレストラン激戦区はどうなったのだろう?
日式餐庁の若き老板(オーナー)も気になる。地下鉄通路も繋がったことだし、商売も軌道に乗っただろうか?
野次馬心がまた首をもたげ始めたら、ついでにこのコーナーに登場した数々のレストランのその後も追ってみようと思い立った。
まずは最大の関心の的である日式餐庁だが、2006年2月以来、半年間で随分様変わりしていた。
店舗面積が172uもあって家賃の支払いが大変だと、オーナーがこぼしていた店は半分に仕切られ、火鍋屋に又貸しされていた。
やはりオーナー自ら配膳までして頑張ったけれど、客を呼び込むまでには至らず、広すぎる店が足を引っ張ったのかも知れない。これで家賃の支払いは楽になっただろうが、根本的な解決には遠そうである。
オープン当初は日本料理を前面に掲げていたが、それでは中々客を引っ張れないと判断したのだろう、今はすっかり鳴りをひそめ、中国語の火鍋料理ポスターがウィンドウに大きく貼られていた。
オーナーは何とか苦境を打開しようと、形振り構わず何でも手を出しているように見える。
その気持ちは分からないでもないが、こうコロコロ変えてはお客の方が迷ってしまうのではないだろうか?
面積が半分になって、随分こじんまりとした店になったが、それでも昼時、夕食時の客は疎らで、すっかり客に見放されてしまった感がする。

平日の夕方のレストランロード・・・泣いてくれる閑古鳥もいない! |

日式餐庁が店舗を半分又貸し・・・火鍋屋が新規オープン |
平日の夕方で、まだ夕食には早い時間帯だったが、それにしてもレストランロードは閑散としていた。
目を覆うようなと惨状といっても、決してオーバーでない凋落振りである。これでは高い保証金と家賃を払って営業している意味がないと思った。
エスカレーターを下りてすぐのところにオープンした麦当労はさすがに強く、集客力は抜群。
賑わっているのはこの付近だけで、レストラン街の入り口からは極端に人の流れが少なくなる。
女房は日式餐庁じゃ食べたいものがないので、別の店にしようと思っているから、私の腕を掴んで早足でズンズン先へ行こうとする。
私は日式餐庁の行方が気に掛かっていたから、引っ張られながらもガラス越しに店内を覗き見た。
そしたら運が良いのか悪いのか、ちょうど福建の若きオーナーと目が合ってしまった。
ここで知らん顔をして素通りは出来ない!女房の手を振り切り、愛想よく中へ入って行った。
「しばらくでした!頑張っているようですね」
「はいはい、ワタシも会いたかったです」
そういって固い握手を交わし、今日はここで食べるしかないと女房に目配せした。
不満気な顔でテーブルに着いた女房は、「だから見るなって言ったじゃない」と小声で漏らす。
メニューを渋々見入ってた女房はとんこつラーメン、私はオムライスを注文した。
客がいない割りに出来上がりが遅い。15分ほどして、ようやくテーブルに並べられた。
見た目は何の変哲もないとんこつラーメンとオムライス。それに初めての店じゃないから、何の疑いもなく食べ出したのだが、???・・・・・・なんだぁ、これは!
女房のは以前食べた時と同じ、こってりした白湯スープであったが、味はまったくの別物。
美味しく変わってくれたのなら拍手喝采だが、それとは逆なのだから大いに戸惑い驚いた。
それにスープはぬるく、オーナーが日本の物に近いと自慢していた麺も、ただの中国の麺に変わっている。
不味くたってお金を払う以上、勿体無いと何とか食べてしまう女房も、さすがに半分くらいでギブアップしてしまった。私のは私ので、普通オムライスって、鶏肉入れてケチャップで炒めたご飯を、薄焼き卵で包んだ物でしょう。
ところが中身はただのチャーハン、それもよ付け合わせで使う人参の細切れやとうもろこし、グリーンピースを入れて炒めた安直な物で、鶏肉の欠片も入っていない。
その時、ピーンと来た。これは日本人コックに高い給料を払えないからクビにしたなと。
半年前なら、特別うまい味いということはないにしても、そこそこ日本の味を楽しめたが、今や見た目だけ同じで、お世辞にもうまいとは言い難い代物に変わっていた。
これで20元も取るのは泥棒と同じだ!私は、もう恐らくこの店に来ることはないと感じた。
一事が万事、ラーメンとオムライスも満足に作れない以上、他の料理だってきっと右へ倣いだろう。
忠告してやりたいが、オーナー自身、味が分からないのでは話にならないし、それほど深い付き合いじゃないから、余計なお世話と嫌われてしまうかも知れない。
店を縮小し、客の足も遠のいた状態では面子がなかったのか、オーナーは帰り際も私らの方へ挨拶に来る様子はなかった。
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専門コックは休憩中・・・配膳小姐が即席調理、客をナメてないか! |

中国人にとって気安い火鍋・・・客の入りもそこそこで健闘中 |
留守にしていたこの半年の間に、ビヤ樽ビルで新規オープンしたのは、日式餐庁の真ん前の鉄板焼き店。
仕切りがなく、通路の延長に忽然と出来たような店で、デッドスペースを利用しているから奥行きはなく、横幅の長いカウンターに設えた鉄板で、お客の目の前で調理して食べさせてくれる。
私らも試しに食べてみたが、味はまぁまぁなのだが、量が少ない割りに値段が高く、客足はいまいち伸びていない。女房がいか焼き、私が牛肉の定食を注文したが、ともに25元(375円)の値段はちょっと首を傾げたくなる。
大食漢が多い中国人では、まず物足らないだろう。満腹まで食べようと思ったら、1人70〜80元くらい掛かりそうだ。中国は肉にしても野菜にしても材料費が安いのだから、ケチっては絶対に繁盛しない。これ、鉄則!
その隣には火鍋屋が出来た。ここは中国人にもお馴染みの料理だし、値段も20元以下に抑えているから、そこそこ客は入っている。
ただ凄く辛そうなので私はまだ試していないが、中国人が抵抗なく食べられる強みで、潰れることはなさそうだ。
この健闘している火鍋を当て込んで、日式餐庁が又貸しした店が火鍋店をオープンした。
通路を挟んだ真ん前なのに、この店主はすごい心臓だと思った。
これが儲かりそうだと思ったら、回りの気遣いなど問答無用の下克上!いかにも中国人らしい。
それを見た前述の日式餐庁オーナーも、乗り遅れては大変と、急ぎ火鍋メニューを追加。
前面ガラスに華々しく大きな火鍋ポスターを貼り出すに至っては、もう支離滅裂である。

泣いてくれるな閑古鳥・・・・・カレーハウスの嘆きが聞こえる |

日本のブランドラーメンも中国では形無し・・・一杯20元じゃぁね |
火鍋店の隣には以前、中国菓子を売っている店があったが、あまりパッとしないと思っていたら、いつの間にか無くなっていた。その場所に今度はカレー専門店が出来た。
日本のも国民食ともないっているカレーだが、残念ながら中国ではカレーはまだ受けない。
したがって、客はいつもパラパラ、隣の火鍋店の盛況をよそに、だれも入っていない時さえある。
大体20〜25元の設定で、写真付きのメニューを見たが、日本のカレーとは一線を画し、本場のカレーを意識した作りに私もちょっと引いてしまった。食べてみようという気が起きないのは、どうも私だけではないらしい。
この調子では、ビヤ樽ビル、餐庁ロードの撤退組に数えられても仕方ない雲行きである。
このカレー店の対面に、前項でも紹介した喜多方のラーメン屋がある。
私はもし餐庁ロードで撤退する店が出るとすれば、このラーメン屋が一番先だろうと前項で予測したが、それを見返すように今も頑張って営業していた。だが、ガラガラの客の入りは如何ともしがたい。
オープン以来、1年数ヶ月なんとか持ち堪えてきたが、撤退はすでに秒読み段階に入ったような雰囲気がある。
天丼、カツ丼が駄目、カレーもラーメンも駄目となると、結局、中国で日本料理は受けないのだろうか?
もっとも不味くて値段が高ければ、誰も来なくなるのは当たり前で、この辺に問題の核心がありそうである。
特別うまい訳でもないラーメンが一杯20元前後しては、計算高い上海庶民はまず食べに行かない。
はっきり言って、一杯6〜7元の中国拉麺で、もっと旨い店が近くにごろごろあるからだ。
私は再三に渡ってこのシリーズで述べてきたが、日本人だけを相手にする商売は、先細りだからやめた方がいい。日式なんて面子に拘ってないで、ターゲットを日本人から中国人に鞍替えして、味も中国人好みにアレンジしたらいい。そして値段も工夫してもう少し抑えることだ。
私も上海に来て、初めて本場の上海料理を食べた時、日本の中華料理店の味とまったく違うのに驚いた。
日本だって日本人の口に合うようアレンジしているのだから、その逆だと思えばいいのだ。
それが身に沁みて分からなければ、上海で成功するのは、かなり難しそうである。
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この餐庁ロードで一番健闘しているのは、なんと言ってもラーメン店の隣にある韓国ビビンバ専門店だろう。
私も何度となく食べに行っているが、石焼き丼に入ったビビンバは本場のものにも負けないくらいに美味しい。
平日の他店はガラガラでも、この店は6割くらい客が入っていて、土日など満杯で待つほどである。
ビビンバは中国人にも抵抗がないようで、客は圧倒的に中国人で埋まっている。
注文してもそう待たされることはないし、値段も普通ビビンバが18元(270円)とリーズナブルな金額で食べられるとあって、この店はまずこの先も安泰ムードが強い。

薩莉亜の進出で餐庁ロードは騒然・・・各店は見習った方が得策だ |

ひっそりとしたスパゲティ屋・・・白旗揚げて、臨時休業か? |
その隣の一番奥にあったベトナム料理店。あったという過去形は、もう潰れたということである。
昨年一番遅くオープンしたのに、一番早く撤退してしまった。わずか1年足らずでの店終いだから、よほど客の入りが悪く採算が取れなかったのだろう。
私もそのうち一度は食べに行こうと思っていたが、もう無くなってしまった。辛うじて女房だけは友人と一度食事をしたことがあったが、取り立てて言うべきものがなく、味も可もなく不可もなくだったらしい。
今にして思えば、オープン当初から広い店舗が重荷のように、少しくらい客が入ってもポツンポツンとした寂しさが漂っていたから、当然の成り行きだったかも知れない。
昨年12月に、突然、店仕舞いして以来、今度はどんな店が入るのか注目していたが、2007年2月早々、ピザとスパゲティで上海でも有名な薩莉亜(サリア)が進出してきた。
お舅さんのマンション近くにも支店があるが、ここなど寒い冬の時期でも昼時は外で列をなしている。
ファミリーレストラン風の内装で、早くて美味くて安いのをモットーにしているから、客が引きもきらない。
なんせスパゲティがオール9元(135円)、30cm大のピザが19元(285円)、分厚い本格的ステーキでも38元(570円)で食べられる。そのうえ嬉しいのは、食後のコーヒーが5元、カプチーノも8元で飲める。
何よりも安いだけでなく、それぞれ納得できる美味しさなのが、大勢の中国人に支持されている理由だろう。
この人気店の煽りをまともに食らったのが、対面で営業する意太利スパゲティ店だ。
ここのスパゲティは大体20元〜25元の値段設定で営業していたが、当初から客の入りは芳しくなかった。
中国人にはスパゲティは受けないのかとも思っていたが、薩莉亜の盛況を見ると、やはり安ければ中国人は何でも食べるのである。
私は旧正月元旦に、上海一族を引き連れて食べに行ったが、薩莉亜の明るい電飾看板とは対照的に、このスパゲティ専門店は店内の明かりも点けず、暗くひっそりとしていた。
私はすっかり春節で休みだと思い込み、HP用に薩莉亜との対比を考えて撮ったのが右上の写真。
さて、おもむろに薩莉亜へ繰り込もうと、何気なくスパゲティ屋を見たら、薄暗いレジで男が私を睨んでいた。
まいった!休みじゃなかったのか!私は慌てて薩莉亜の店内に逃げ込んだ。
もう完全に勝負あった!という感じで、開き直ったあの店は急遽臨時休業にでもしたのだろうか?
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ピザがこの大きさで19元・・・味も抜群で、勝負あった! |

隣のイタリア料理店・・・スパゲティ、20元以上の値段が踊る |
薩莉亜の中は、日本のファミリーレストランをそっくり持ってきたような造りで、ふと日本に帰ったような錯覚に陥る。照明も明るく、小姐従業員の接客態度も合格点だ。
日本人と顔形が一緒だし、その可愛いい唇から発する中国語でさえ、なんとなく違和感を感じてしまう。
スパゲティやピザは勿論、その他色々な料理を一品ずつ注文して、試食を兼ねながら皆で摘んだが、上海一族にも概ね評判がよく、綺麗に平らげてしまった。
特にピザは最高、日本の宅配ピザより美味しい気がした。まぁ、長い上海滞在でしばらく食べていなかったせいもあるだろうが、それを割り引いてもお勧めの一品に値する。
客を得した気分にさせ、あ〜おいしかった、また来ようと思わせなければ、リピートは利かない。
この商売の鉄則は日本も同じだろうが、驚くのはたった10年で中国人従業員の意識がここまで変わったことだ。
もはや突慳貪で愛想のない店が少なくなった上海で、未だに国営企業の体質を残しているのは、コンビニチェーンの“好徳”くらいになった。
ここはすごいですよ〜、愛想のないのは天下一品、「歓迎光臨(いらっしゃい)」「謝、謝(ありがとう)」なんて言ったら損だという顔で、終始ムッツリとしてお釣りを渡すのさえ無言である。
照明は薄暗いし、いいところを探すのが大変なくらいだから、外資系の羅森(ローソン)や全家(ファミリーマート)に、このところ押されっ放しである。
それというのも経営母体の会社は元国営企業で、コンビニチェーン路線変更するに当たって、雇用問題の解決におばちゃん社員をそのまま配属させてしまった。だから、愛想がない。
更に、更に、この日2月18日が薩莉亜オープンサービスの最終日、元々安い値段の上、更に10%引いてくれるのだから嬉しい。甥っ子も含めた5人で118元の消費のところ、106元にしてくれた。
帰りがけ、対面の意太利スパゲティ店を横目でチラッと見たが、明かりは消えてままで、カウンターの男もいなかった。そこでまた性懲りもなく撮った写真が右上のである。
スパゲティの20元、22元というのが読み取れる。薩莉亜の9元スパゲティに対抗して、値段を下げるのだろうか?それとも丸っきり扱う料理を変えて出直すのか?あとは言い難いが撤退の道しかない。
真に弱肉強食の世界は厳しい。私もかつて、こんな活況に沸く上海で何か商売を始めなきゃ、千載一遇のチャンスを逃したも同然と焦ったこともあったが、結局は何もやらないことが一番よかった。
もし女房が上海人特有の見栄っ張りで、どうしても餐庁や美容室をやりたいと言い出したら、抗しきれたかどうか?いわんや、それに私も同調して華々しく店をオープンさせたかも知れない。
そうすりゃ、一千万や二千万は吹っ飛んでいただろう。恐らく深い悩みを抱えて、何もせずに念願の10kgダイエットが出来たかも知れないが、そんなことで痩せても体にいい訳がない。
そんな無謀なことを言ってくれなかった女房に感謝する。何もしてないのに感謝された女房はキョトンとしていた。
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