12.ラブホテルを探せ!
| 2002年8月 2002年夏休み後半、懲りずに又々青春切符で、ネットで知り合った関西の友人を訪ねることにした。 格安料金の青春切符利用は、すでにお盆休み前、松島民宿の旅で予行演習済み。 普通列車での鈍行各駅停車も慣れてしまえば、案外乙なモノである。 土地々の趣向を凝らした駅弁を食べながら、ユッタリのんびりした旅が出来る。 これが最高の贅沢と思えば、なんとなくそう思えて来るから不思議だ。 東京を7:02に立ち〜沼津〜静岡〜浜松〜大垣〜米原の計5回乗り換え、そしてようやく15:16に京都へ着いた。せまいニッポン!そんなに急いでどこへ行く・・・・・・・そうだ!そうだ!その通り。 このスピード化時代に逆らう延々8時間の余裕旅ダァ〜・・・・・・・・・ちょっと腰が痛い。 マァ、世の中巧く出来ているモンだ。暇があれば金がナイ!金があれば暇がない!が定説。 1日目は大阪人の友人宅へご厄介となる。 前々からの有り難いお誘いではあったが、やはり一般家庭に泊めさせて頂くとなると、それなりに緊張する。 いつもの事ながら私は、東京人に良く見られる初対面時の警戒感やぎこちなさで、ひたすらの愛想笑い。 [袖振り合うも多生の縁]程度の間柄でありながら、好意に甘えて厚かましくも押しかけて来てしまった自分の厚顔無恥ぶりに、後悔の冷や汗がタラリ。 そこ行くと我が女房、如何にもお客然として遠慮がナイ。まぁ普段から我が家でも大した事はやらないくらいだから、よそ様へお邪魔したらこれは完全にやらなくてイイものと思っているから始末が悪い。 上海女性の特性なのか、タダの我侭なのか、どっちにしても先様にはご勘弁願いたいと、胸の中でソッと手を合わせる。 翌日、「もう2〜3日ゆっくりして行けば?」と言ってくれた友人の有り難い申し出に心が動くも、昨夜の非礼を詫びつつ「東京に来た折は、是非ウチにも寄って下さい」と心名残りの手を振り々、京都観光を目指して出発した。 相も変わらず腰が落ち着かぬ女房。旅程の仕切り癖は毎度の事で、夕べから気持ちはとうに京都の名所へ飛んでいる。 京都は名所旧跡がゴマンとある。欲をかいたって1日で全部廻れる訳でもない。 カミさんは元々それほど古いお寺などに興味が無いのは先刻ご承知だ。 何かの折、友達に「私だって京都に行った事がある!」と言えればそれでイイのだ。 定期観光バスが京都駅前からひっきりなしに発着していた。カミさんは自分達で路線バスに乗っていった方が安いと言うが、不慣れな土地でとてもそんな時間はない。 今日はザッと京都観光をしたら、急ぎ神戸に向かわなければならない。 神戸には私の友人とカミさんの語学交流友達がいる。今日は女房の番で、明日の夜は私の友人と夫婦ともどもの会食予定。 その語学交流友達、前々から聞いていたが、中年のそれも男だという話だ。 昨夜、女房は必携のパソコンでその男友達にメールを打ち、今晩三宮で会う約束になっていた。 勿論、私抜きである!なんたる暴挙!・・・・その大胆不敵さに一瞬たじろぐが、本人は至って屈託がない。 勝手に決めちゃってアッケラカンとしているが、私だって決して心中穏やかにしては居られない・・・・のだ。 しかも語学交流なら当然、外人と思いきや、これが日本人だというから、ますます話がややこしい。 なんでも大きな会社の重役で、いつも世界を飛び回っているらしい。上海や東京でもよく会うし、確かにメールのやり取りは英文みたいだから、その点では語学交流も満更嘘ではないのだろう。 転んでもタダ起きない上海妻にしてみれば、将来仕事の面でお世話になるかも知れないとの、欲に駆られた思惑が働いているに違いない。 話の分かる亭主を演じるのも、これで中々気苦労が堪えないのだ・・・・・・・・それにしても怪しい? そんな訳で、数あるコースの中でも「京の3名所」と銘打った3時間半の一番短かくて安いコースを躊躇する事なく選んだ。三十三間堂、金閣寺、清水寺のみでちょっと寂しい。 ・・・・・女房にとってはこれで十分納得の京都観光満喫、お釣りが来るくらいじゃないかな? 残暑厳しい中、汗を拭き拭きの観光。京都巡りなど中学生の修学旅行以来だった。
夕方5:30三宮に着いた。大きな駅で幾つも鉄道が入り込んでいる。駅前の雑多な賑やかさは東京と変わらないし、整備された広い道路に隣接するビル群には、あの阪神・淡路大震災の悲惨な面影はもうない。 時間も押しているので観光案内所に飛び込む。営業時間6時までのギリギリ滑り込みセーフ。 「今日泊まるホテルないですか?」・・・・・・・・息が荒い 「ア〜、今日はどこも一杯ですョ〜」 ガ〜〜ン、何で!なんで?お盆休みも終わったのに、しかも今日は木曜じゃないか! そこをナントカ・・・・・・・・・態度一変、この際、手揉み足揉み執拗に粘る。 閉店間際に飛び込んで来たイヤな客、受付嬢の面倒くさそうな態度ありあり。 パソコンのキーボードを叩く指もちょっと投げやりだ。 「ここから10分くらいのホテルならあります。1万8千円です・・・・・・けど」 その1万8千円が言い終わらぬうちに、夫婦ともサッと踵を返し案内所のドアを押した。 問答無用!足元を見るのも大概にせいョ。2300円の青春切符でやって来て、そんな高額ホテルに泊る気などサラサラない。 な〜に、そこはタッグ最強チーム。力を合わせりゃ一夜の宿くらい何とかなる・・・・・・筈? 夕方も6時を回り駅前は大変な雑踏。勤めが終わったサラリーマンがひと時の憩いを求めて、チラホラ点き始めた赤いネオンの方向へ吸い込まれて行く。 歩道にある植え込みのレンガに腰を下ろし、目の前をひっきりなしに人が行き交うのをものともせず、女房おもむろにパソコンを開けて、ホテルのインターネット検索開始。 ところが一大発奮したものの、携帯電話では立ち上がりが遅くて話にならない。 あ〜泣きっ面に蜂・・・・ツイていない時はこんなもんか、頼みのパソコンまさかの電池切れ。 弱り目に祟り目とはこのことだが、カミさんはこんな事ぐらいでは全然めげない。 これが駄目ならすぐさま二の矢を繰り出すところなんぞ、実に発想が男っぽい。 「ここに居てネ、動かないでョ!インターネット・カフェ探して来るから」 私は早くに父親を病で亡くして、長男の責任感から母親や弟の面倒を長い事看てきた。どこかに父親代わりの意識もあったろう。だから自分の家族も含め、いつも頼られる立場だったのだが今は逆転した。 現カミさんと再婚して以来、男勝りに加え仕切り癖のお陰で、私はすっかり頼る楽さを覚えた。 勿論、家事不得意妻であるから、何から何までと言う訳にはいかないが、パソコントラブルや国内外の旅行に関しては随分楽をさせてもらっている。 「ナイョ〜、全然ナイ!」 ちょっと落胆の色を見せ女房が戻ってきた。続いての三の矢がまだ思い付かないらしい。 ここに座っていてもしょうがナイ。兎に角、お神輿を上げて交代でリュックを担ぎ、ネオン瞬く夜の巷を当て所なく彷徨う事となった。 こうなったら最悪ラブホテルでもOK。だが泊りは10時過ぎだったか、11時過ぎだったか、ラブホテルなんか利用したのは忘れるくらい前の話だから当てには出来ない。 この期に及んでも、まだソロバンを弾く己が恐ろしくもある・・・・・・・・ ヒョッとして、さすがの女房だってラブホじゃ嫌がるかも知れないし?歩きながらひとりブツブツ様々な思いが交錯する。しかし逸る意気込みも土地勘がないので空回り、結局そのラブホさえ見つからナイ。 歩き疲れて日が暮れて、ジワリジワリと宿無し雀の哀感が漂い出し、マジに今日泊る所がなかったらどうしようと、不吉な予感が胸を締め付ける。 気を揉んでもしょうがナイ!ちょうど通り掛ったサブェイにてひと休み。コーヒーを啜りながら作戦の練り直しだ。 隅の壁際にコンセントをいち早く確認、すばやく席を確保。シカトして電気無料拝借、再度ホテル検索を試みる。何軒かのビジネスホテルがヒット。値段も7000円〜8000円と希望の線に近い。 手早く電話番号を書き留め、その場から急ぎ携帯電話で打診して見た。 「あ〜・・・・・そうですか、一杯ですかぁ・・・・ハイ、ありがとうございました」 全滅だった・・・・・・・オカシイ?そんなに混んで居るのか? PM7:00も近くなり、女房が男友達と会う時間が迫っている。 ここに来て未だホテルも決まらない以上、女房キャンセル已むなしの断。(そりゃぁ、そうだろう・・・・) 「ここまで来ていてキャンセルは悪いョ、行ってくればァ・・・・どうしても無きゃぁラブホテルでもイイんだから」 ここが私の優しいところだ。心とは裏腹に女房を気遣うところが憎い。 「ラブホだって、有ればワタシは構わないョ」・・・・・・ヤッパリなぁ〜、そう言うと思っていた。 カミさん取り合えずその男友達には、1時間ほど遅れる由の電話を入れた。 「ホテルが一杯でまだ探しているんです。ラブホテルでもいいんだけど知りません?」 「し、しりませんョ・・・・・・知る訳ないでしょう・・・ドギマギ」 何を勘違いしたのか・・・・・・受話器の向こうで、慌て捲くった相手の顔が見えるようだった。 店内はまるで茶髪娘の溜まり場で、長時間の居座り組が多い。店とすると余り有り難くない客なのだろう。 喋る声は大きく、内容は怠惰ではしたない。只今苦悩中のこちら宿無し雀とは如何にも対照的だ。 隣の席でたむろする、胸元のはだけた派手な服の娘達に思わず聞いて見たくなりましたョ。 「この辺にラブホな〜い?」・・・・・・・・言えなかったけど。 兎に角、ここを出てもう少し探して見ることにする。これだけの繁華街でナイ筈がないのだが? (あとで判明した事だが、新神戸駅付近や一つ先の元町近辺にゴマンとあったそうな・・・・・・) PM7:00も回り、さすがに疲れたか女房がポツリとつぶやく・・・・・・ 「昨日のお友達の家へ戻ろうか・・・・・」 「それは出来ん!いい歳して泊まるところが無いなんて、おめおめと戻れるもんか!」
肩に食い込むリュックを忌々しく思いながら、ラブホテルの探索は続く。 ひとしきり賑やかな繁華街も切れたところまでやって来た。 女房は「もうこんなところにナイョ」と言うがイヤイヤそうではない。 ここら辺りにきっとある! ウン?匂うぞ・・・・・・昔取った杵柄?、私の鋭い嗅覚で、遥か先にそれらしきネオン煌(きらめ)く建物発見。 逸る気持ちを抑えつつ、それっ!とばかりに一目散に駆けつける。 ビジネスホテルもどきだが、如何にもラブホテル風な佇まい。 入り口看板に燦然と輝く泊りシングル・ダブル5700円〜ツイン8500円の文字。 他にも12000円から20000円まであったが、私達には目に入らない。 最低ランクで良いのだから。 もう迷うことはナイ!カミさんを先頭に猛然と入り口扉を押し開く。 コソコソと隠れるように入り込むラブホテルの常道パターン無視。 切羽詰った夫婦には淫靡な影など微塵もあろう筈がナイ。 運良く?泊れると聞きヤッタ〜。とうとう見付けたぞ!これで野宿せずに済んだ・・・・・・・万歳!三唱 歳の差歴然でヨレヨレのTシャツ姿二人連れ。面食らったかフロント兄ちゃん、矯めつ眇めつ品定め。 聞きもしないで一番安いランクの価格を提示してくれた。 「ダブルで8500円プラス消費税で8925円です」 さすがにラブホテルらしく前金制で領収書もくれなかった。 さて一件落着、部屋に荷物を置くと駅に取って返した。すでにPM8:00をちょいと回っている。 駅前で女房と別れ、こっちは半分ヤケッパチのカラオケ一人舞台だぁ〜。 PM10:00を回った頃には2人共部屋に戻った。 片や粋な日本料理屋で、豪華な食事をご馳走になったらしい。私と言えば豚骨ラーメン。 ヒョンな事で出会った絶賛ラーメンだったが、何となくあまりの違いに納得出来なかった。 「ネェこれ!ちょっと見てョ!」 こういう言い方は、まずロクな事じゃない。 テーブルに置かれたホテル案内、カラー写真入りで各部屋料金が明示されている。 「この部屋、ツインでもないのに、何で8500円取られるのョ!」 そう言われれば、この部屋改めて確認する必要もないWベッドルームだ。 おまけに泊りは朝食付きと載っているのに、さっきフロントで一言も言ってくれなかった事に憤慨している。 確かに料金表にはシングル・ダブルルーム5700円〜となっているが、それでは如何にも安すぎる。 今時カプセルホテルだって2人ならもっと取られるだろう。 きっと客引き用の目玉広告で仕方ないと女房をなだめるが、もうすでに闘志満々状態。 さぁ大変だ!ウチの女房、こういう不当な扱いを黙って見過ごすのが出来ないタイプなのだ。 騙されたとか、コケにされたとかに、人一倍敏感なタチなのである。 もうどうしても、事の次第をフロントに確かめに行かなければ、このまま夜も眠れそうにない剣幕。 そういきがられても私としては気が重い。ラブホテルでそんな事を抗議する奴はいないだろう・・・・・・・ 結局、夜も11時を過ぎたというのに、闘争女房に押し切られた格好で1階のフロントへ。 カミさんしっかり証拠の料金表を携えている。 カウンターの呼び鈴をチ〜ンと鳴らす。 24時間対応していると言っていた通り、フロント兄ちゃんが奥から出てきた。 「さっき8500円払ったけど、部屋はツインじゃないですよネェ〜・・・・」 「この朝食はホントにあるんですかァ〜」 女房が我慢しきれず、畳み掛けるように横から口を挟む。 丁度そこへ運悪く入ってきた熱々カップル。只ならぬ気配に一瞬場違いの戸惑いを見せ、コソコソとUターン。 虚を衝かれたフロント兄ちゃん、シドロモドロでつじつまの合わない説明に終始。 兄ちゃんも今更間違えていましたとも言えないだろう。心優しい私は抗議の手を緩めない女房を制止して、相手の立場を察し、こちらから玉虫色の終止符を打ってやった。 ・・・・・・・・ホッとしたのも束の間、フロント兄ちゃんの悪夢は続く。 「朝食はドコで食べるんですかァ〜」・・・・・・・女房一歩も引かぬ面構え 「朝食は・・・・・・お弁当にして部屋にお持ちします・・・・・」 特別言われなきゃ、朝食カットはミエミエの雰囲気。それとも言う奴など滅多にイナイのか? ラブホテルでここまで捻じ込んだのは、ウチらだけじゃないかぁ〜。 ようやく納得出来る回答を引き出し、上海妻も気が晴れたか悠々の凱旋。 何でも駄目で元々、上海式に言うだけ言って見るモンで、改めて中国パワーを見習った次第であります。 結局、このホテルに2泊。勝ち取った朝食弁当が神戸港観光での昼食、その翌日の大阪城観光での昼食に化けたのでありました。・・・・・・それにしても中国人パワーげに恐るべし。
イヤハヤ皆さん大変ですぞ!この調子じゃ、上海嫁と喧嘩なぞしても勝ち目は殆どないでしょうネェ〜 日中国際結婚をお考えの方々、努々お忘れになりませんよう、お気を付けあそばせ・・・・・・ 13.撮影隊がやって来た!へ続く・・・・ |