4.上海蟹の季節
2002年11月も半ば、今が上海蟹の一番美味しい季節だ! もっとも私は、どうもあの沢蟹の親分見たいのと格闘するのが苦手で、今まで真剣に食べたことがナイ。 この小さい蟹の一体何処を食べるのだろうと、いつも不思議に思っているくらいだ。 やはり蟹は日本のタラバ、太い足の殻を剥くとゾロッと出てくる豪快な身の食べ応え。 以前、北海道で食べたのが忘れられナイ。 それに比べれば上海蟹の足は楊枝の如き細さ。皆のを見ているとチュッチュと器用に吸い込んでいる。 どうも其処からして面倒臭そうで、食べる気持ちが萎えてくる。 タラバこそが蟹というイメージがあるから、どうも上海蟹は小さすぎて馴染めない。 カミさんも上海一家も、これを実に美味しそうに食べる。見る見る間に蟹殻の山が築かれる。 「婿さんは、何でこんな美味しいのに食べないんだろう」という顔をして・・・・・・・ この季節になると、お舅さんからお呼びが掛かる。・・・・・・・上海蟹が旬の秋、最大の憂鬱。 「お父さんが蟹を食べに来ないかってョ〜!」女房が電話口で叫ぶ。 お舅さん達にすれば決して安くない上海蟹。折角用意してくれたのにそうそう断っては失礼になる。 準身内とはいえ外様の身は辛い。気を遣って渋々でも2度に1度は出掛ける様にしていた。 最初の頃は、「熱烈歓迎」とばかりに上海蟹の山がデンと食卓に出され、目が点になったほどだ。 さすが最近は私が好まないと分かったのか、いい按配にそれほど出さなくなった。 しかしお舅さんにすれば、これが中国式歓待の意味もあるので止める気配は今のところナイ。 女房に身を解してもらい、形ばかりのご相伴に与かる。 まぁ、そのうち好きになるかも知れないと、その後も続く温かい親心が泣かせるのだ。 ウチのマンションの割と近くに自由市場があって、ここに行けば安く幾らでも手に入る。 お姑さんなどは蟹に限らず野菜も肉も、専ら自由市場へ買いに行く。 カミさんはそこまで行くのが面倒らしく、大して値段も変わらないと近くの蟹専門店で済ませてしまう。
一匹幾らではなく重さで買う。均すと大体一匹6〜15元(90円〜225円前後)、この辺りが一般庶民用だろう。 中には一匹1000元もする幻の上海蟹があるらしい。誰が食べるのか知りたいもんである。 勿論、こういった自由市場にある訳がなく、せいぜい一匹30元〜100元クラスが奥にある別の水槽に入っている。 上海庶民はそれを見ながら「うん!これを食べたら絶対ウマイョ」と口々にいいながら、店頭の盥(たらい)でゴチャゴチャ蠢く小振りの目玉品を買って行く。 30元のを一匹買うより、6元のを5匹買ったほうがお得だという庶民感覚は、日本も中国も変わらない。
雄より雌の方が若干値段が高い。これは蟹味噌が多く入っている所為らしい。 カミさんに言わせれば、見た目多そうだが卵も味噌もゴッチャになっていて、雄から比べるとちょっと固めで好みが分かれるという事だ。 雄の蟹味噌はトロッとした上品なクリームの味がして、これが堪えられないのだという。 カミさんがあまり美味しい美味しいと絶賛するものだから、今回上海蟹のレポートを書くにあたり、気は進まないがもう一度挑戦してみた。 ウン?・・・・・・ううぅ〜まい! たった今まで生きていたのを、そのまま蒸したホカホカの出来立てが、何の味付けもなしでこんなに美味しいとは大発見。いつもいい加減冷たくなったのを食べていたから、美味しさも半減だったんだぁ〜。 今年の夏、青春切符で東北宮城まで出掛けた折、民宿で食べた取れ立ての生ウニの味と蟹味噌の味が、妙に似ている感じがした。蟹味噌だけではない蟹足も今まで楊枝如きと侮っていたが、大味でない濃縮された蟹の旨味があってこれ又美味。 確かに5元や6元では蟹も小さいから、それほど食べるところはないが、その貴重な少しが何倍にも口の中で美味しさが広がるのだ。 女房など丹念にしゃぶり尽くすように、一度に3匹ほどぺロッと食べてしまう。 この上海蟹の生産地は常州が主で、殆どがここから送られてくると、物知りのお舅さんが言っていた、 一番美味しい時期は、11月7日〜12月一杯。翌年2月の旧正月までは何とかイケル。 その後もあるにはあるが、身が小さく美味しくはないらしい。 5月の声を聞くとそろそろ出回り始めるが、やはり一番美味しくなるのは秋口に入ってからだという。 大衆餐庁では一匹15元〜20元、ちょっと高級餐庁で80元〜100元が、およその提供値段だろう。
庶民は大概蒸してそのまま食べる。残酷ですョ〜・・・・・・石川五右衛門と同じ。 これを見ちゃったら、尚更ムシャムシャ食べる気にはなりません。 そこ行くとカミさんなんて平気平気!鍋の中で蒸されてもがく蟹を、「まだ生きてる」なんていいながら突っ付いている。・・・・・私がもし病に倒れ動けなくなったとしたら、上海蟹と同じ運命を辿らないよう願うばかりである。 この項おわり |