上海の厳しい現実篇

8.偽物アラカルト

                                                     2006年12月
 前回、偽物の話が出たのでもう少し。
外国人にとって、中国での生活はまさに偽物との戦いと言っていい。
恐らく騙された経験は大なり小なり取り混ぜて、一度や二度ではないと察せられる。
まったく中国は偽物に対して寛容であり寛大なのは何故なのだろう?
今回は私ら夫婦が経験したエピソードを交え、検証してみたい。

 昨今は世界からのブーイングで、ポーズとしては政府も偽物を取り締まる姿勢は見せるが、交通安全週間と同じで一定期間が過ぎれば、またどこからともなく偽物商品が集まりだし、みんな商売に勤しんでいる。
この地で暮らす国民意識は殆んど変わっていないのが現状で、とにかく先に金を儲けた奴が勝ちだ!という風潮は益々激しさを増している。

 巷の声を要約して代弁するとこうなる。
モラルに反しようが、ちょっとくらい人を泣かそうが、金、金、金が物をいうご時勢なんだ。
大体よぉ、モラルのへちまなどと御託を並べるのは先進国の連中だ。
だがよぉ、今は先進国だって、昔どうなんだい。人の土地を荒らしたり、分捕ったりと、やりたい放題やってきた筈なじゃねぇのかい。
それをよぉ、後発の我々が豊かになるのを怖いみてぇに、あれやっちゃいかん、これも駄目ってのは、そりゃぁ筋が通らねぇってもんだ。
俺たちは何も力ずくで金をくれと言っている訳じゃねぇ、手先の器用なのを活かして物を作っているだけだ!
なに、それが悪いってぇ。フン!先に豊かになったからって、お高く留まるねぇ。
なんでぇ、ちょっとぐれぇ、真似したからって、頭から角出してガタガタいうんじゃねぇよな〜

 まぁ、少し過激で、べらんめえ調で、コミカルに書いたが、私は当たらずとも遠からずだと思っている。
大方の庶民は、偽物がそんな大きな過失だなんて、それほど思っていませんね。
本物が良いと分かっていても高くて買えないから、中国製の壊れ易い湯沸かし器やテレビ、洗ったら縮んだり、毛玉が出来たりするセーター、食べたら体に悪そうな農薬漬けの野菜や果物を、承知で買っている。
いやいや、うちのお舅さんなんか、そんな体に悪いものを政府が許可する筈がないなんて言っているから、案外、実状を知らない庶民が多いかも知れませんけどね。

まだやるのか!都市開発もう隙間がないぞぉ〜

中国の結婚式も年々華やかに羨ましそうに見る庶民3人娘

 今は豊かになるための過渡期であって、どこの国もそういう過程を経てきたのはご承知の通り。
日本だって40、50年前は外国製品に憧れ、何でもかんでも舶来品は日本の物より勝っていると、誰もが思っていた時代があった。
お隣の韓国もソウルオリンピック以来、急激な経済発展に邁進していた時期、時の大統領は内需拡大を目指し、盛んに韓国製品を買いましょう、使いましょうと、国民へ呼びかけた。
だが、自分が使っていた電化製品など、すべて日本製品だったという笑えない話がある。
韓国も今から20年くらい前は、今の中国と同じ状況だったことが窺われて、興味深い。
その当時私も度々韓国へ行く機会があり、現地の人から直接聞いた逸話だが、
買って間もないテレビがもし急に映らなくなったとしたら、韓国製は「あ〜やっぱり韓国の物はダメだ!」と溜息をつくが、もし日本製品なら、「これは私の扱い方が悪いんだ」と考え、もう1回説明書を読み直すだろうと聞いた。
果たして、韓国製テレビの方も、扱い方が悪かったかも知れないのにである。
そのように当時は自国の製品に愛着もなかったし、信用もなかったが、今の韓国製品は日本を凌ぐ勢いであることは、周知の通りだろう。

 今日、大企業に成長した日本の会社だって、元はといえば外国製品の物まねから始まったものが多い。
ただ、日本人はそれに一工夫も二工夫も加えて、元の製品よりいい物を作る技術に長けていた。
そして高度成長をひた走る中、様々な公害病の苦い経験を経て、ようやく今日の繁栄を築いたのだ。
中国も今はまだ偽物や粗悪品が出回っているが、近い将来は大きく改善されて、悪いものは自然に淘汰されて行くものと、私は思っている。
だから、先進国が味わった苦い経験を必死に説いても、今の中国の人には聞き分けることが難しい。
もう少し時間が掛かる、中国にいてそんな空気を肌身で感じる昨今なのであります。



 先日、道端でたまたま聞いてしまった男2人の会話。

「○○の奴、最近、金回りがいいみたいだな」
「あいつは商売がうまいからな、品物が悪くたって、なんだかんだ、高値で売っちまうから頭がいいんだ」
「そうかい、そうだよなぁ・・・・・・そうでもしなきゃ金なんて残らないよなぁ」
「そうだよ、社会が変わったんだから、俺たちだって切り替えなきゃ、儲かりっこないって!」
「最近、物もどんどん上がっているし、このままじゃ、やって行けないしな」
「そうさ、良い人間だって悪くもなるさ、俺だってチャンスがあれば、絶対やるぜ」

これが正直な庶民の声でしょう。社会が急激に変わると、人間は心の豊かさなんかより物質の豊かさへと流れ易くなる。その過程で、どうしても起こってくる歪なんでしょうか。
東京オリンピックと北京オリンピック、40年以上の時間のズレがあるものの、社会状況は良く似ている。
あの当時、日本人のみんなが豊かさに飢えていた。
サラリーマンだろうと職工だろうと、みんな目がギラギラしていた。
誰もが今日より明日、明日より明後日と、家族の生活を少しでも豊かにさせるため、懸命になって働いた。
そんな真面目な、おとうさん、おかあさんたちの姿が、どうしても今の中国の姿とダブってくる。

中国もクリスマスが定着した、12月に入るとどこもツリーを飾りだす

デパートには溢れるような品物豊かになった事の実感ヒシヒシ

 偽物例、その1
 ちょっとした売れ筋商品なら、必ず偽物があるといっても過言ではない。
ブランド物の時計やバッグのコピーは有名だが、日常品にも偽物は氾濫している。
大手メーカーが秋の新作物といってニューデザインを発表すれば、翌週にはちゃっかりそのデザインを戴いた偽物が庶民市場に出回ってくる。
安物買いの銭失い、激安商品大好き人間の女房も、つい最近騙された。
デパートで見た冬物の羽毛ジャケット、ライトグリーンの色もデザインも一遍に気に入ったが、値札を見て躊躇した。950元(14250円)といえば、日本でもユニクロへ行けば十分買える金額だ。
中国で買う中国製品としては、どうしても高いと思わざるを得ない。
パッと咲いた笑顔が、見る見る萎んでいった女房を見て、可哀想に思った私は男気が出た。

「気に入ったんなら買えば?」
「いいよ、高すぎるよ。デパートは高い家賃分も入っているから馬鹿々しいよ」

 そこで庶民市場を回った。なんとまぁ、同じもんがあるじゃありませんか、メーカーのタグこそなかったものの、色も形もそっくり。ひょっとすると、中国でよくある横流し品なのかも知れない。
メーカーから発注を受けた縫製業者は、注文より必ず多く作り、それが庶民市場に流れてくるという噂は聞いたことがある。メーカー側との契約も信義もあったもんじゃない。
そうだとしたらお買い得品ということになる。早速、店主と値段交渉したら120元(1800円)で話がついた。

「ねっ、だから言ったでしょ。デパートは儲け過ぎなんだよ」

 大体、上海で現在売られている羽毛ジャケットの相場は、繁華街にあるデパートで1000元(15000円)前後。
ちょっと離れた小売店、若しくは大きなスーパーで300〜400元(4500〜6000円)くらい、ここらまでは品質の違いは多少あっても、まぁ本物と言っていい。
だが、これ以下の極端に安い物には要注意、まず偽物か粗悪品と思って間違いない。
本物が激安価格で買えるうまい話は、そんなやたらに転がっていないということである。
でも、これは後で分かった話であって、この時の女房は小躍りして、儲かった!と喜んだ。

上海も歳末商戦真っ只中人、人、人で歩けな〜い

上海の本屋立ち読みじゃなくて、腰をすえた座り読み

何かこれ着てても暖かくないね、なんでだろう?」

買って間もなく、女房が不審に気が付いた。
商品仕様には確か羽毛80%と書かれていたし、店主も「あんたは運がいい、これは絶対間違いない品物」と太鼓判を押していたから、そんな訳はない・・・・・・筈。
私はやっぱり騙されたかという思いが頭を過ぎるが、女房は気に入ったものだから、信じたくはない。
そこで羽毛ジャケットを平らに広げて総点検。
羽毛は軽くてフックラが身上、圧してペチャンコにしても、すぐ復元するものだ。

「大丈夫だよ、貸してみな」・・・・・・と言いつつ、私は力任せに圧して見せた。
「ほら〜、ちゃんとね・・・・・・・あれ〜ぇ、これ戻らないね」

圧した部分は老人の肌のように、いつまでも形状記憶素材みたいに戻ってこなかった。
一旦疑わしい目で見出すと、細かい部分の縫製も、随分といい加減なのがわかった。
これはもう疑いようがない、騙されたと認めざるを得なかった女房の顔には、しばし哀れさが漂った。
まぁ、この件などは偽物を本物価格で買わされたのとは違って、被害は最小限で済んだから、騙された中にもラッキーだったと言えなくもない。

[9.続・偽物アラカルト]へつづく

2006年12月28日分、次回更新まで中国ランキングのクリックよろしく。

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